弁護士の陣内です。

薬局から衛生マスク(家庭用・医療用・産業用マスクをいいます。)なくなり、転売する人が増えました。このような事態に対処するため、法令(国民生活安定緊急措置法第26条1項及び委任を受けた省令)が改正されて小売事業者から衛生マスクを取得し、取得価格を超える金額で譲渡することが禁止されました。これは、今年の3月のことです。
今月になって、街角でマスクの販売をしている光景を見かけることが増えました。美容院、動物と触れ合えるカフェ、洋服屋、飲食店など、おおよそ衛生マスクと無縁の場所で衛生マスクが無数に売られています。
これが、『ナゾノマスク』です。

このマスク、1箱50枚入りの衛生マスクが4千円前後と結構微妙な価格設定です。話を聞くと、小売事業者から仕入れているわけではなく、輸入業者等から仕入れて販売しているとのこと。この場合は,法令違反はないようです。
ナゾノマスクの当否の問題には,本稿では言及しません。
この衛生マスクの販売は簡単に参入することができるようです。ただ、出自がやや不明瞭なところがあり、クオリティにも難がありトラブルも散見されます。多いのが、耳にかける紐が簡単に外れるトラブルです。紐をホッチキスで止めて使用しているようです。

さて、衛生マスクの販売は、通常、種類物の売買です。同じマスクが市場にあり、提供された目的物に欠陥があれば、売主は欠陥のないものを提供する必要があります。すなわち、市場に同種の衛生マスクが存在する以上、売主は調達して提供する義務を負うと考えられていました。
この点について,改正債権法(令和2年4月1日施行)では、契約適合責任というものを定めております。改正前は瑕疵担保責任と呼ばれていたものです。瑕疵というのは欠陥という程度の意味ですが、契約の目的物(今回の例ですとマスク)に着目した責任で、今回のマスクのように市場に同じものがたくさんある場合は、適用されませんでした。
この契約適合責任は、従来と異なり、かなり柔軟に責任を追及することができて、かつ責任が過大なものとならないように配慮されています。先のマスクの例だと、マスクの修補や代替品の引渡し請求です(追完請求権・民法562条1項)。また、紐が取れる分のマスクは無価値と考え個数にカウントせず、不足分の引渡しを求めることも考えられます。もっとも、買主がマスク1箱(50個入り)あたり1個の欠陥品しかないにもかかわらず、新たに1箱を提供するように求めた場合は、売主にとって不相当な負担と考えられます。この場合は、買主が指定した方法と異なる方法で、マスクを提供することができます(例えば1個のマスクを改めて提供すること・民法562条1項ただし書き)。
責任の内容をみるときわめて常識的ですが、予めトラブルがあることを想定して、意思を確認しておくことがスムーズではあります。
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