20/5/1更新
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弁護士の村木です。

 

テナントを借りて店舗を経営する経営者の中には、緊急事態宣言の発出により臨時休業にせざるを得ず、収入が入らなくなった結果、致し方なく賃料の支払いが滞ってしまう場合があります。

 

テナントをオーナーから借りるに際し、借主は賃貸借契約を結ぶことになりますが、詳細については契約書内に記載があります。



賃料については、テナント利用の対価として、一月に1回等、決められたタイミングでオーナーに支払う必要があります。賃料の支払いが滞る場合、オーナー側から契約解除事由にあたるとして退去を求められるおそれがあります。テナントであれば2か月から3か月程度の滞納により、契約解除できる旨の記載がされていることが多いです。

ころで、例えば借主側が1月分の家賃を滞納してしまったとしても、そのことを理由に即座に退去が認められるわけではありません(契約書にそのような記載があっても、裁判では認められないでしょう)。ですが、緊急事態宣言による自粛要請等もあって、いつになったら安定した収益が得られるようになるか、非常に先が見えないと言わざるを得ません。

 

では、家賃を滞納する恐れが高くなった、若しくは実際に滞納してしまった場合、どうすれば良いでしょうか。

 

国土交通省のHPには、3月31日付で、国土交通省が複数の不動産関連団体に対し、新型コロナウイルス感染症の影響により、賃料の支払いが困難な事情があるテナントに対しては、賃料の支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置を取ることを検討するように要請したようです。

http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000201.html

しかし、このような要請に関わらず、滞納により退去の請求がされるおそれはゼロではないでしょう。

 

国会では、経営悪化の事業者に対する家賃補助や公共料金の支払い免除のための立法化に向けて議論がされているようです。また都道府県の中には、自粛要請を受けて臨時休業をした事業者に対する補助金等の支給を検討している自治体があるようです(なお、家賃補助を目的とした住居確保給付金については、厚生労働省が支給要件を緩和したようです)。 

ですが、実際に支給や恩恵を受ける時期についての見通しが立たないことも多く、目下の賃料の支払いができないおそれは尽きません。

 

テナント料の支払いに苦慮する事業者としては、まずはできるだけ早い時点で、オーナーや管理会社に連絡を取って賃料の減額や支払いの猶予を求めての交渉をするべきでしょう。後になって、言った言わないで揉めないためにも、何らかの合意書を取り交わすのがなお良いです。オーナー側としても、いざ滞納する直前に借主から減額等の相談をされても対応してくれないおそれがありますので、早めにコンタクトを取るのが肝要です。

 

しかし、交渉の甲斐なく、オーナーが減額に全く応じず、退去を迫られたような場合も、すぐに退去を決断するのではなく、まずは最寄りの弁護士に相談してみるのが良いでしょう。第三者に整理して話をすることで、冷静に現状を分析することができますし、弁護士の助言を下に今後の方針を決めることもできるかもしれません。場合によっては、減額等の交渉をしてもらえるかもしれません。

いずれにせよ、早め早めに対応することが後に大きな違いが出てくるので、予め不測の事態に備えるように準備することこそが大切だと思います。



 (R2/5/1追記)

経済産業省HPの「新型コロナウイルス感染症関連」のページで「テナント家賃の支払いを支援する制度について」というカテゴリーがあり、添付のPDFを見ると、法務省民事局により「賃貸借契約の考え方」が紹介されています。

それによると、「新型コロナウイルスの影響により3カ月程度の賃料不払が生じても、不払の前後の状況等を踏まえ、信頼関係は破壊されておらず、契約解除(立ち退き請求)が認められないケースも多いと考えられます。」と紹介されていました。

上述しましたが、契約解除の申し入れがあっても、慌てず、弁護士に相談するのが肝心と思います。

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