建物を建てるときに、複数の業者などと契約を結ぶことはとても多いです。
建物を建てるまでには、実にたくさんの工程をクリアしなければなりません。
また、さまざまな法規制もありますので、後に苦い思いをしないために、契約書のチェックなど不安があれば弁護士にご相談ください。
また、万が一トラブルが発生してしまったときも、証拠集めなど、業者と交渉する前にできることがあります。
以下では、建築計画から工事の完了までの各段階における重要事項について説明します。

建築規制

64679719f9bbe1b1563959750b0ab14f
建物を建てる際、利用者や周辺住民の安全を守るため、法令によって規制されています。

都市計画法では、土地を12の用途地域に分け、建ぺい率や容積率、排水・電気設備、屋根・外壁に至るまで、さまざまな規制を定めています。
その他、日照や採光、開放感などを守り、良好な住環境を保つため、高さ制限や道路斜線制限、日陰制限、防火制限なども定められています。

自身の土地にどのような規制があるのか、専門家と相談しながら、より良い土地活用を目指しましょう。

地域区分原則数値(%)特例
防火地域内の耐火建築物特定行政庁の指定する角地
用途地域①第1種低層住居専用地域30,40,50,60+10%+10%
(ただし、耐火建築物の特例で
[適用なし]とされた地域については、
さらに10%加算されることには
ならない)
②第2種低層住居専用地域
③第1種中高層住居専用地域
④第2種中高層住居専用地域
⑤第1種住居地域50,60,8080%の地域では適用なし
80%の地域以外は+10%
⑥第2種住居地域
⑦準住居地域
⑧近隣商業地域60,80
⑨商業地域80
⑩準工業地域50,60,80
⑪工業地域50,60
+10%
⑫工業専用地域30,40,50,60
用途地域の指定のない区域
30,40,50,60,70

建ぺい率と容積率の他には、高さ制限・道路斜線制限・日影制限・防火規制などがあります。
高さ制限とは、建築物の高さを地盤から一定の高さ以内に制限することをいいます。
具体的には第1種・第2種低層住居専用地域では、良好な住環境を保護するため、建築物の高さは、原則として10mまたは12mのうち都市計画において定められたものを超えてはならないと定められています。
道路斜線制限とは、道路上空の空間を確保して、採光や開放感を与えるための制限です。
容積率に応じて定められた距離の範囲(下図の20mの範囲)にある建物は、道路斜線の下に収まっていなければならないというのが、道路斜線制限です。

日影規制とは、建物が周囲に日影を落とす時間を一定以下に抑えるための建物の高さ・形状の制限のことです。北側斜線制限(北側にある隣地の日照を確保するための建物の高さ制限)と併せて、周囲の日照の保護を図るための規制です。
また、日本の建物は伝統的に木造が多く、火災の危険を伴うため、建築基準法は、地域的に防火地域・準防火地域を指定して建築物に対する規制をしています。

建築設計・工事管理契約

・建物の設計
・工務店の選定
・工事見積書のチェック
・建築確認申請
・工事監理
・完成した建物の検査


建物を建てる際、さまざまな工程が必要になります。そのうち、建築工事の設計や監理について、設計事務所に依頼します。
平成17年、耐震偽装問題が発覚し、指定確認検査機関の検査の精度が社会問題となりました。
設計や見積書を他の建築士に見てもらうなど、自分の建物を守るため、対策を考えるべきです。

建築設計・工事管理契約

工事請負契約は、建築主と建築業者の間で交わされる契約です。
内容的には工事の完成した時点において請負代金を支払うというものです。
契約書には完成時期、工事期間、工事代金、工事内容について必ず明記します。
その他の事項としては、建築工事の遂行、検査と引き渡し、契約の変更・違反・責任・紛争の解決についての条項があります。

契約書の問題点のチェックについては、法律相談のみで解決できる場合がありますので、少しでも疑問に感じたら、専門家にご相談することをお薦めします。

請負契約における主なトラブルと対処法

代金の支払い後になってローンの審査が通らなかったなどという事態に備えて、解約事項を明記しておく
支払いが遅延すると、建築業者の建築資材の支払いの停滞という不都合も生じるため、違約金を設定しておく
引渡しの遅延建物の引き渡しが遅延すると、その間建築主が一時的に余分な賃料を払わなければならなくなるため、違約金を設定しておく
工事の変更追加工事の必要が生じた場合には、その都度、工事の内容と費用についてきちんと書面に明記する
(立証責任は請負人にある)
工事中の損害工事中の建物が地震や火災、台風などで倒壊したり焼失したりした場合に備えて、建築主/建築業者の負担を定めておく
瑕疵(かし)が生じた場合一定の期間内に瑕疵が露呈した場合には、建築業者は無償で修理を行わなければならない。欠陥についての相談は、「日本司法支援センター」や弁護士会の「法律相談センター」、各都道府県に設置されている「建築工事紛争審査会」で受け付けている

なお、耐震偽装事件が発生したことから、再発防止のために、建築基準法が改正され、建築確認申請後の間取りの変更等は認められなくなりました。これにより、工事の追加・変更に関する紛争は減少しました。
しかし、仕様の変更・設備面の変更等、多くの変更要因がありますので、トラブルが発生しないよう、変更の都度、契約書を作成して双方が署名する必要があります。
メモや議事録であっても、金額や工事内容が記載されていれば変更契約書として有効になりますので、これら書面を作っておくことにより、トラブルを回避することができます。

地盤・基礎工事

bc46bf06c8154fe784353f146f92c41e
建物の欠陥(瑕疵)については、コンクリートのひび割れ、鉄筋のたわみ、虫食い木材の使用、釘のはみ出し、シックハウスなど様々なものが挙げられます。
請負契約において定めた内容通りではなく、不完全な点を有するものについては、請負人に瑕疵担保責任を追及することができます。

建築請負契約における瑕疵担保責任については、民法はじめ、住宅の品質確保と促進等に関する法律、民間連合協定工事請負契約約款などで定められています。
その内容は、瑕疵修補と損害賠償の請求であり、建築請負契約の解除はできません。
悪質な業者は何かと言い訳をして責任を回避しようとします。
そこで、欠陥を発見したら、まずは、専門家に鑑定を依頼します。専門家とは建築士や欠陥住宅問題に取り組んでいるNPO法人などです。
鑑定書を作成してもらい、弁護士などの法律家と相談し、その上で業者と交渉します。訴訟に発展する場合も想定して、交渉のやり取りは書面や録音などの方法で残しておきましょう。

また、瑕疵担保責任を追及できる場合でも、業者が倒産してしまうと、被害者は泣き寝入りということにもなりかねません。
特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律によって、平成21年10月1日以降に引き渡される注文住宅の建設請負業者には欠陥保証のための保険下級または保証金の供託が義務づけられました。
もしもの事態が生じても被害者は泣き寝入りすることなく保険金を受け取れる事になります。

シックハウス

シックハウス症候群や化学物質過敏症等、化学物質による室内空気汚染が原因とされる居住者の健康影響は大きな問題です。
建物がシックハウスだった場合、業者に対して、瑕疵担保責任や債務不履行、不法行為の責任を追及することができます。
平成14年の建築基準法改正前は、業者への損害賠償は否定されていましたが、近年では、肯定した裁判もあります。

建築反対運動

建物を建てるにあたり、隣地との関係では、民法上「境界線から50㎝以上離さなければならない」と規定されています。
また、都市計画法や建築基準法には50㎝よりも狭い間隔での建築を許容している規定があります。
この距離制限に反して建物を建てようとする者がいるときは、隣の土地の所有者は、その建築を止めさせ、または変更させることができます。

さらに、それも無視して建築が進むようであれば、裁判所に、建築工事の差し止め命令を求める訴えをすることになります。
ただし、建築に着工してから1年以上経ったとき、または建物が完成してしまった後では、中止・変更の請求はできません。
この場合は、損害賠償の請求しかできないことになります。
そこで、建築の中止を確実にしたいときは、裁判所に建築工事禁止の仮処分を申請することになります。

建物を建築する場合に生じる問題

建物と建物の間の距離原則として50cm離さなければならないが、建築基準法により接境建築も許される
ぎりぎりに建物が
建てられそうになった場合
裁判所に建築工事禁止の仮処分の申請をする
建築工事の必要がある場合隣地への立入が可能
建築協定の拘束力建築基準法上の建築協定は、協定成立後の不動産取得者にも拘束力が及ぶ

また、大規模マンションなどの建築においては、周辺住民の反対運動が起こることがあります。
反対運動の態様は、立看板の設置、ビラ配り、署名運動といった表現行為によるものから、私道の通行妨害といった実力による阻止まで様々なものがあります。
実力行使によって工事が遅延し、損害が発生したような場合は、住民に対し不法行為責任を追及できる場合があります。
立看板の設置やビラ配りであっても、その記載内容が虚偽であったり、悪質なものである場合には、不法行為が成立する場合もあります。
 建築主は近隣に計画の概要や騒音・振動への協力を要請する書面を配布したり、説明会を開いたりして、住民の理解と協力を求めることが大切です。

悪徳リフォーム

「地震に耐えられる家かどうか、無料検査をおこなっております」
「震度6以上の地震で倒壊の恐れがあります」
一人暮らしの高齢者を狙い、上記のような言葉でリフォーム工事の契約を誘導する業者が増えています。
このような業者は、本来は不必要な工事を簡単にしただけで、仕事とは釣り合わない法外な金額を取っていくのです。
このような被害に遭ったときは弁護士にご相談ください。
代金に見合った工事がなされていないという事であれば、詐欺による取消しを主張して、代金の返還を請求することもできます

被害に遭わないための対策

1. 体的にどのような問題があるのか、いくらかかるのかについて、納得のいく説明を受け、見積書を提示させる。
2. さらなる追加工事の有無についても確認しておく。
3. 別の業者にも事前調査をさせる。
scroll-to-top