契約書のチェック

不動産売買は金額が大きく、トラブルが発生しがちです。
しかし、契約書をきちんと作成することで、そのようなトラブル発生を抑えることができ、トラブルが生じたときも、契約書が有力な証拠となり、トラブルの早期解決につながります。
また、契約書を複数枚作成し、各当事者が1通ずつ保管すると、紛失や改ざんを防ぐことができます
契約書のチェックであれば、法律相談のみで解決できる場合もあります。一度、弁護士にご相談ください。

売買契約書に記載される主な事項

1. 当事者(売主・買主)の氏名・住所
2. 売買の対象になる不動産に関する情報(面積・所在地・価格等)
3. 手付金や中間金についての取決め
4. 物件の引渡し時期・所有権移転に関する取決め(売主の義務等)
5. 記録に関する取決め(登記する時期・登記費用の負担)
6. 地積と販売価格の取決め(実測・登記簿上のいずれによるものか)
7. 契約解除と違約金についての取決め
8. ローン利用時の取決め(ローンの審査に通らなかった場合の対応)
9. 不可抗力による物件の被害に関する取決め
10. 瑕疵(かし)担保責任に関する事項(物件に瑕疵があった場合の取決め)
11. 固定資産税・都市計画税などの租税公課の負担に関する取決め
12. 特約(特記事項がある場合に記載)


契約書の内容以外にも、宅地が元々どのような土地だったのか、調査しておくべきです。
沼地や田んぼといった地盤の緩い土地だと分かったときは、基礎工事がどの程度施されているかについて、業者にきちんと確認しておきましょう。

欠陥住宅・耐震偽装

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住宅に欠陥が見つかったら、業者と交渉する前に、専門家に鑑定を依頼し、鑑定書を作成してもらいましょう。
また、業者と交渉するときはできる限りやりとりを文書化・録音しておきましょう。

以前は、業者に責任を追及しようにも、業者が倒産しているといった場合、購入者が泣き寝入りせざるを得ませんでした。
しかし、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」の制定によって、平成21年10月1日以降に引き渡された新築の分譲住宅の販売業者、注文住宅の建設請負業者は、欠陥補償のための保険加入または保険金の供託が義務づけられ、購入者は泣き寝入りすることなく、保険金を受け取れることになりました。

瑕疵(かし)担保責任

不動産の取引において、売主には瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)があります。
取引をした不動産に瑕疵(かし)があると、売主は瑕疵について過失がなくとも、補修や損害賠償、場合によっては契約の解除を請求されます。瑕疵担保責任は特約で排除することができます。
よって、売買契約の段階で、「本物件に隠れた瑕疵(欠陥)があっても、売主は一切の責任を負わない」という旨の特約の存在を確認しなければなりません。

民法買主が「隠れたる瑕疵」の事実を知ってから1年以内に契約の解除または損害賠償の請求をすることができる
売主は、瑕疵担保責任を追わない旨の特約をしても、知っていて告げなかった事実については、責任を免れることができない
宅地建物取引業法売主が宅建業者の場合、瑕疵担保責任の期間について、引渡しの日から2年以上とするという内容の特約を除いて、民法の規定より不利な特約を結んではならない
住宅の品質確保促進等に関する法律(品確法)
新築住宅の場合、売主は引渡しの日から10年間、住宅の基本構造部について瑕疵担保責任を負う

仲介業者の説明義務違反

宅建業者は、不動産取引に関わる場合、契約当事者に対して一定の事項を説明する義務を負います。
これを「重要事項説明義務」といいます。説明方法は書面でなければなりません。口頭のみでは違反となります。
「重要事項説明書」は契約当日に渡されることが多いようです。
しかし、それでは、契約前に書類の内容を的確に判断するのは難しいので、事前に書類のコピーなどを受け取り、内容を確認しておいた方がよいでしょう。
業者に任せきりにするのではなく、自身の目で判断しましょう。

主な重要事項

1. 不動産の提示(土地、建物)
2. 売主に関する事項
3. 登記簿に記載された事項
4. 法令に基づく制限の概要(都市計画法、建築基準法に基づく制限)
5. その他の法令に基づく制限
6. 私道に関する負担等に関する事項
7. 飲用水・電気・ガスの供給施設および配管施設の設備状況
8. 授受される金銭の額および該当金銭の授受の目的
9. 契約の解除に関する事項
10. 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
11. 手付金等の保全処置の概要
12. 住宅性能評価にかかる事項

広告トラブル

不動産広告を適正に保つため、不動産業界では「不動産の表示に関する公正競争規約」というものを定め、自主規制に取り組んでおります。
法律や条例によっても、広告について規制があります。
不動産広告に虚偽の記載がある場合は、詐欺を理由に取消しを求めることができる場合があります。
また、錯誤を理由に契約の無効を主張して、手付金の返還を請求することもできる場合があります。

クーリング・オフ

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クーリング・オフ制度は、特定の商品購入をしたり、サービスを受ける契約をしたりした際でも、一定の期間内であれば理由なしに契約を解除できる制度をいいます。
この制度は、不動産取引でも利用できます。
ただし、売主が宅建業者である、宅地または建物の売買契約である、買主が申込みや契約を行った場所が事務所等以外である、という要件が必要です。クーリング・オフが適用されると、契約は初めからなかったことになり、支払ったお金が返ってきます。
また、違約金や賠償金も必要ないのが一般的です。
クーリング・オフの手続は書面で行います。
「届いていない」といったトラブルを回避するためにも、内容証明郵便を利用するのが良いでしょう。

地上げ屋・占有屋・追い出し屋

・恫喝(どうかつ)など、強引な方法で地主や住民を立ち退かせ、細切れだった土地をまとめて転売し、利益を上げる
・競売物件において、立退料を引き上げようと、その物件にいつまでも居座る
・家賃を滞納した賃借人に対し、家の鍵を変える、といった違法な嫌がらせを行い、賃借人を追い出す


弁護士法は、法律で特別な定めがない限り、弁護士資格をもたない者が、報酬を得る目的で、法律事務(立ち退き交渉など)を取り扱うことを禁止しています。
また、強引な方法の内容によっては犯罪行為になることもあります。
このような問題にお悩みであれば、一度弁護士にご相談ください。

住宅ローン

住宅を購入するとき、資金の確保は大きな問題です。そのとき、選択肢として「住宅ローン」があがります。
しかし、「住宅ローン」を組むとき、金融機関は必ず返済してもらうために、購入する住宅を担保する、連帯保証人を立てる、といったことを要求します。
そのため、支払いが滞らないよう無理なローンを組まないことが大切です。
不動産業者や金融機関のパンフレット、説明を鵜呑みにするのではなく、利率や返済条件、期間などを十分に比較検討し、自分の収入や生活に合わせた住宅ローンを選択する必要があります。

公的融資

年金住宅融資厚生年金、国民年金に3年以上加入している人が対象。低金利、固定金利型。
住宅や同居家族等について一定の条件を満たす必要がある。
財形住宅融資1年以上財形貯蓄を続けている会社員や公務員が対象。
融資額は大きいが金利が変動型(5年間固定型)。
自治体融資
都道府県や市区町村によって異なる。
直接融資、融資あっせん、利子補給の3種類がある。

民間融資

フラット35民間金融機関と住宅金融支援機構が提携してできた「最長35年長期固定金利」の住宅ローン。
銀行・信用金庫の融資金融機関によってさまざまな種類や内容のローンがある。
公的融資よりも審査条件が緩やか。低金利化している。
労働金庫の融資
労働組合に加入している事が条件。
それ以外は銀行系のローンとほぼ同じ。
保険会社(生保・損保)の融資
不動産業者、建設会社、ハウスメーカーなどが、金融機関と提携して保険契約者にローンをあっせんする。
直接保険会社が貸すことはまれ。
社内融資
勤務先の企業に社内融資制度があれば、他の民間の融資期間よりも有利な条件で借りられることもある。

不動産競売

不動産競売は、裁判所の関与する手続の元、安価に不動産を手に入れることができます。
しかし、以下のようなデメリットもあります。

法的保護に欠ける物件に欠陥があったとしても、契約解除や損害倍書を請求することができない
自己資金が必要最低でも売却基準価額の10分の2を原則とした保証金は用意しておかなければならない
内覧の制限
買受希望者は、希望物件の中を見ることが制限される
住人と交渉する必要がある
引渡しまで保証されないので、引渡しについては、自分で手続を行わなければならない。
ただし、権限なき占有者に対しては引渡命令(民執法83条)の申立てをすることができる
調査は自分で行う
物件調査は全て自分で行う
情報提供期間が短い
閲覧開始日が入札期日の前になっている

また、裁判所は引渡しの責任までは負わないため、買受けの目的が居住用や販売用の場合は、競売物件を適法に占有する者に対し、立退料を払って出て行ってもらうことも必要になります。
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