近隣トラブルの被害に遭ったら、まずは相談することが大切です。
市区町村の担当課で状況を説明し、深刻な被害にまで陥っている場合には、いちど弁護士に相談してください。
法的措置を検討していきましょう。

境界(筆界)確定

土地の境界は目に見えるものでないため、「境界標」という石材を埋め込んで表されています。
それがない場合、境界の確定は、測量図や登記所にある地積図・公図などの資料をもとに、隣接所有者と協議するのが一般的です。
協議が進行しない場合や境界についてトラブルが生じた場合、土地の境界には「土地の所有権」という「私法上の境界」だけでなく、「登記制度に反映されている地番と地番の境目」という「公法上の境界」という意味があるため、境界の確定は公の手続を経る必要があります。

トラブルの種類

時効取得した土地の境界時効により所有権を所有した場合も登記を入れておく
隣の建物の越境越境部分が少なく、所有権への侵害が小さいと越境部分の取壊しが認められない事がある
越境建物の放置時効取得されることがあるので時効の中断をする必要がある
枝や根の越境木の根は勝手に切ることができるが、木の枝は木の所有権に伐採を請求する必要がある

協議が整わない場合や、境界についてトラブルが生じた場合であっても、土地の境界は、公法上の境界という意味もあるため、現金や米などの完全な私物を分けることとは異なります。
公の手続を経た上で、決定されなければなりません。
そこで、境界を確定する手続として、裁判所が関与する「筆界確定訴訟」と、裁判所を通さず簡易で迅速な手続ができる「筆界特定手続」の二つがあります。

筆界特定手続きの流れ

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建築工事・道路をめぐるトラブル

道路は、一般公衆の通行に利用される、高い公共性を持つ物的施設です。
法律は道路に関する様々な禁止行為を規定しており、道路を構成する敷地・支壁その他の物件については原則として私権を行使できないとする制限規定を置いています。
そのため、自分の所有する土地や建物であっても、道路と接触する場合には、道路についての法律や条例の制限を受けることになります

道路に関する主な法律

民法・囲繞地(いにょうち)通行権(210条~213条)
・(交通)地役権および地役権の時効など(280条~284条)
道路法・道路行政の基本を定め、また、道路の種類等も定められている
建築基準法・建築物の敷地は、幅4m以上の道路に2m以上接する必要がある(接道要件。43条)
道路交通法・道路の危険防止
・交通の安全円滑
・道路交通のルールを定める

道路に対する規制のうち、建築工事との関係では、「接道義務」と「セットバック義務」が非常に重要です。
接道義務とは、建築物の敷地は、原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していなくてはならないというルールのことです。これは、災害時にすぐに避難できるようにするための義務です。

もっとも、接道義務があるからといっても、日本には幅が4mに満たない道路がたくさんあります。
そこで、建築基準法の規定が適用されるに至った基準時に存在していて行政庁から指定を受けた、幅員1.8m以上、4m未満の道路(いわゆる、2項道路)については、道路中心線から2m敷地を後退させる義務が課されます。この義務をセットバック義務といいます。
セットバック義務については解釈上の争いがあり、地域によって運用が異なることもあり、紛争の原因になりがちです。
これは事前に市区町村の建築担当の窓口で、セットバック義務の有無・内容について調べる必要があります。

接道義務やセットバック義務が課されると、自分が所有する土地であっても、自由な利用が制限されます。
自己所有地が接する道路がこれらの義務を課される道路かどうか調べる必要があります。

袋地通行権

他人の土地を通らなければ公道に出ることができない土地(袋地)にいる者は、別段の契約を結んでいなくても、他人の土地を通行することができます。これを、袋地通行権(囲繞地通行権・いにょうちつうこうけん)といいます。
袋地の利用価値を維持するために法律上当然に認められる権利です。
もっとも、通行は必要かつ、他人の土地に最も損害が少ないと思われるところを通行しなければなりません。

また、通行権者は原則として通行料を支払わなければなりません。
袋地通行権については、通行場所や通行料をめぐる紛争が多く見られます。
なお、土地の一部譲渡によって袋地が生じた場合は、袋地の所有者は残余地を無償で通行できます。
借地権者であっても、その借地権が対抗要件(借地権の登記、借地上の建物の登記)を備えていれば、袋地通行権が認められることになります。

塀の設置

2棟の建物が別々の所有者に属し、それらの建物間に空き地があるときは、各建物の所有者は、他の所有者と共同の費用で境界線上に塀や柵を設置できます。この権利を囲障設置権といいます。
囲障設置権は、建物所有者であれば、土地の所有者でなくても認められる権利です
逆に、借地人に建物を建てさせて土地を賃貸しているだけの土地所有者には認められません。
塀の設置については、隣家の建物所有者と協議を行うことになります。

隣人が協力せず、協議が整わない場合でも、自ら塀を設置して、その設置費用や管理費用の一部を隣人に請求することができます
その場合の塀の設置の基準、すなわち、「塀の設置場所」「材質」「高さ」「費用の分担」などについては、民法や条例・慣習の定めに従うことになります。塀の所有権は、隣人との共有と推定されます。

塀について生じる問題

自分の土地に塀を作る場合隣家と協議することなく、自分の費用で設置できる
塀を修繕したい場合設置同様平等負担が原則 自ら修繕して後で費用を請求することもできる
塀が壊れたことによる事故共同設置の場合には隣家とともに賠償責任を負う
土留工事は誰がするのか斜面の所有者は自由にできる

日照権

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日照権とは、憲法25条が保障する、健康で文化的な最低限度の生活を営むための生存権の一種で、太陽光を享受する権利とされています。
建築基準法でも、日影規制や北側斜線制限など、日照権を保護するための規制が定められています。

日照が妨害され、被害の程度が社会通念上の受忍限度を超えているのであれば、不法行為として損害賠償の請求や、建築工事の中止などの差止請求ができます。

塀について生じる問題

1. 仮処分命令申立書の作成
2. 日照権侵害の主張を根拠づける資料収集
3. 印紙の貼付け
4. 申立書類の提出
5. 保証金の供託

騒音・振動

騒音や振動について、騒音規制法・振動規制法・環境基本法など、さまざまな法律や条例によって規制されています。中には懲役や罰金などの刑罰を科すものもあります。

騒音・振動についてのトラブルは、まず、行政による指導や内容証明郵便によって改善を求めることになります。
それでも改善されなければ、訴訟によって損害賠償や差止めを請求していくことになります。

ただし、生活騒音は認められにくく、事前の証拠収集がとても重要です。
騒音測定器の貸し出しを行っている市区町村もありますので、一度市区町村の窓口に相談してみるのもいいでしょう。

騒音・振動で住環境が害されている場合

1. 行政指導の申立て 内容証明郵便
2. 訴訟
3. 証拠収集
4. 騒音・振動 受忍限度を超える
5. 改善(差し止め・損害賠償)

眺望・風通し

眺望の権利を主張することは、一般的に困難だと言われています。

しかし、判例で眺望を保護する必要がある場合には、一定の要件を満たせば認められるものもあり、また、当初の契約内容に眺望が入っていた場合は、損害賠償が認められる場合があります。

風通しが損なわれると、快適な生活が損なわれるだけでなく、建物の老朽化などの悪影響があります。
さらに、日常生活上も、洗濯物の乾き方が悪くなったり、暑さが軽減されなかったりという悪影響もあります。
しかし、風通しの被害は判断が非常に困難なので、日照や騒音被害の受忍限度を考慮する要素として、一緒に主張するのがいいと考えます。

悪臭被害

悪臭について、工場や事業場からのものについては、悪臭防止法という法律があります。
しかし、生活悪臭についての規制は設けられていません。
よって、生活による悪臭被害は民法の不法行為として損害賠償などを求めることになります。
その際、日照権の侵害や騒音・振動の被害と同じく、受忍限度を超えているかどうかが基準となります。

水漏れをめぐるトラブル

不動産取引においては、売買・賃貸を問わず、水漏れ被害を受けることがしばしばあります。
このような場合、まずは、専門業者に依頼して、水漏れの原因を確認します。
水漏れの原因がどこにあるかによって、責任を追及する相手方が異なります。

マンション購入直後から雨水が浸入する、給水管の構造的欠陥による水漏れがするなど、水漏れが購入当初から存在する瑕疵(欠陥)による場合には、マンションの売主に責任(瑕疵担保責任)を追及し、損害賠償請求や契約の解除ができるケースもあります。


原因
責任
分譲
マンション
購入当初からの欠陥
(通常必要な注意では発見できない瑕疵に限る)
売主に対する瑕疵担保責任(損害賠償・解除)
購入後1年以内、又は2年以内(宅建業者から購入した場合)に請求する必要がある
購入後の
欠陥
専有部分その専有部分の所有者が責任を負う
共有部分原則:区分所有者全員で責任を負う
(外的に、管理会社や工事業者に責任を追及できる場合もある)
原因不明
(共有部分に原因があると推定される)
賃貸
マンション
借主の過失過失のある借主が責任を負う
通常用法・構造上の欠陥家主が責任を負う

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