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共同相続人の中に、行方不明の人がいます。
遺産分割協議はこの場合はどうすればよいですか?

遺産分割協議を進めるためには、相続人全員の同意が必要です。まずは戸籍や住民票の取得をした上で相続人全員に連絡が取れるかどうかを確認し、それでも連絡が取れない不在者がいる場合には、不在者財産管理人の選任申立を検討することになります。

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第1 相続人調査の必要性

 被相続人が亡くなり、いざ相続手続を進めるにあたり、相続人が誰なのか、分からない場合があります。

 亡くなった方が、親や兄弟など近い立場であれば、相続人が誰なのかについて確認することはそれほど難しくないでしょう。

 他方、遠縁が亡くなった場合や親兄弟と疎遠だった場合、いざ、遺産分割手続を進めようにも、相続人が誰か分からないこともあるでしょう。

 

 遺産分割手続を進める際、まずは相続人が誰なのかについて確定すべく戸籍や住民票を取得して調査を進める必要があります。具体的に、相続人の出生から死亡までの戸籍を全て取得して、家系図を作成し、相続人を確認します。

 なお、戸籍は、法務局で取得できます。

 

 このようにして相続調査を進めると、相続人の有無や住所は判明しますので、その上で手紙などを送付して、遺産分割手続協議を開始することとなります。

 

 ところが、実際に連絡してみたものの一切反応がない、若しくはあて先不明で連絡が取れない等、相続人と連絡が取れなかったり行方が不明であったりするため、遺産分割手続を進められないこともあります。

 単に反応がない程度であるならば、もしかしたら面倒だったり、応対したくなかったりするだけかもしれませんので、このような場合には遺産分割調停を申し立ててみて、裁判所からの通知があれば反応がある場合もあります。

ところが、住民票を移していないため行方不明の場合には裁判所に調停を申し立てたとしても、相手には連絡が取れませんので、調停を申し立てたとしても意味はないでしょう。

 このような場合、不在者財産管理人を選任するように家庭裁判所に申し立ててみることが想定されます。

 

 

第2 不在者財産管理人とは?

 上述の通り、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない不在者について、利害関係人からの申立てにより、家庭裁判所は不在者財産管理人を選任することができます。

選任された不在者財産管理人は、不在者自身や、その財産について利害関係を有する第三者の利益を保護していくことができます。

 

 申立てができるのは、不在者の利害関係人、具体的に不在者の配偶者や相続人、債権者などです。管轄は、不在者の従来の住所や居所を管轄する家庭裁判所となります。

 

 選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保管行為をしたり、権限外行為に関する裁判所の許可を得た上で、遺産分割手続や不動産売却をしたりすることができます。

 

 申立人は申し立てるに際し、申立書のほか、不在者の戸籍謄本や戸籍の附票を準備する必要があります。そのほかにも、不在であることを証明する資料や不在者の財産に関する資料、利害関係人の場合にはそのことを証する資料等も併せて準備する必要があります。

 

 選任された不在者財産管理人は、不在者や利害関係を有する第三者の利益を保護するための手続を行います。

 なお、一度選任されると、不在者が見つかった場合や、不在者の死亡や失踪宣告が確認された場合、不在者の財産が亡くなった場合等まで管理人の職務が続くことになります。言い換えますと、遺産分割手続を進めるために不在者財産管理人の選任を申し立て、遺産分割協議が成立したものの、それだけでは不在者財産管理人の職務が当然終了するわけではないということになります。

 

第3 申立の際の費用ほか

 申立の際に要する収入印紙は800円となります。

 

 他方、不在者財産管理手続は、終わりが見えない手続でもあります。

 また、不在者財産管理人の選任申立をする場合、上述した通り、不在者の財産関係を申告する必要があります。

 そして、不在者の財産だけでは維持管理をするための費用に不足があると裁判所が判断した場合、高額な予納金を支払う必要がある場合もあります。そのため、申立てを検討するに際し、申立人が予納金を負担する必要があるかもしれないことを念頭に置く必要があると言えるでしょう。

 

第4 弁護士依頼の検討等

 今回のご質問のように、相続人の一人が不在者の場合、遺産分割協議をどのように進めていくのが良いのか、非常に悩ましいと言えます。

 そうは言っても、遺産分割手続が滞ると、手続自体が終わらないばかりだけではなく、被相続人の遺産の管理等が主用にできなかったり、相続税申告手続の期限に間に合わなかったりするおそれもあるかもしれません。

 

 被相続人の生前から、相続人候補者に不在者がいることが分かっている場合には、予め弁護士に相談した上で今後の取りうる対応について検討しておくことは大切と言えます。

 

 弁護士に委任するメリットとしては、「遺産分割手続をスムーズに進められる」、「不在者財産管理人の選任申立を依頼できたり、申立後の裁判所とのやり取りを任せたりできる」、「遺産分割協議書の作成や内容の妥当性を判断できる」、「相続税申告など、必要な情報を共有できる」等、様々なものが挙げられます。

 

 遺産分割手続に悩まれたら、まずは虎ノ門法律経済事務所神戸支店に相談してみることをまずはご検討ください。

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