19/9/3


弁護士の陣内です。


最近,中小企業の事業承継がよく話題になります。

話を聞いていますと,中小企業のオーナーが事業承継を考える背景には,後継者に関する悩みが多いようです。

さらには,オーナー自身の相続を見据えた話も絡んでくる例もよくみられるところです。

そこで,中小企業の事業承継とオーナーの相続に関して起こる問題を紹介していきたいと思います。

まず,事業承継をお考えの場合は,計画を立てて,身内の方でも事業の譲受人でも,承継させることが肝要です。

もっとも,中小企業のオーナーは,ご自身であるから,会社を運営することができていると考え,事業を承継させる時期が遅れることが多々あるようです。

確かに,中小企業は,企業=オーナーの場合が多く,オーナー自らが経営を続けることは正しい場合が多いと思われます。

しかし,不測の事態が生じることもあります。それが,オーナーの相続です。

特に,遺言を残さなかった場合,遺言があっても解釈が必要な抽象的なものであったり,相続時の状況を反映していない古いものであった場合は,会社の経営に混乱が生じます。

例えば,オーナーが会社に貸付金を有していた場合です。

中小企業では,オーナー自身が会社にお金を貸すことがよくあります。

当然,会社の運営のため必要であるから,オーナーは貸付けをするので,会社の業績が悪い時に,会社に返済を求めたりはしません。

この場合,オーナーに相続が起きるとどうなるかを考えてみましょう。

遺言がない場合,普通預金や郵便局の通常貯金,定期預金は,遺産分割協議がなければ,相続人に当然には相続されないという判例が出ています。

しかし,貸付金は,相続人に当然に分割されて,相続されることになります。

仮に,相続人AとBがいたとしましょう。Aは会社を継ぐ予定だとすれば,相続した貸付金について,会社にすぐに返済するように求めたりはしないでしょう。

Bは会社とは無関係で,かつオーナーとの折り合いが悪かったので,相続した分の貸付金の返済をすぐに求める,ということも考えられます。

その結果,会社からBが相続した分の貸付金が引き上げられ,会社の経営に影響が出ることも考えられます。

このような事態を避けるためには,遺言で会社に対する債権債務関係の帰属を整理しておくことが必要になってきます。

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