20/4/28

弁護士の村木です。

 

新型コロナによる景気悪化の事情もあって、「給与ファクタリング」というものが流行っているようです。

 

少し調べたところ、給与ファクタリングとは、会社員の会社に対する給料を受け取る権利、すなわち賃金債権を、給与ファクタリングを扱う専門業者(以下、「給与ファクタリング業者」と言います。)に譲渡することを前提に、給与ファクタリング業者から賃金債権が発生するよりも前の時点で金員を取得する手法のようです。なお、債権を譲渡したと言っても、給与ファクタリング業者によって、直接会社に譲り受けた賃金債権の支払いを請求するわけではなく、あくまで貸し付けた会社員等に対し、後日、相当額を回収するようです。これは、使用者は、法律上、直接労働者に賃金を支払う義務を負います(労働基準法24条。賃金支払いの原則)ので、給与ファクタリング業者と言えど、賃金債権が譲渡されたことを理由に、会社に直接請求できないからと思われます。

 

利用者としては、一見、給料の前借りの感覚で給与ファクタリングを利用できるようにも思えますので、魅力を感じる人もいるようです。しかし、実際には、事業者自身、実態が不明だったり、非常に高額な手数料名目の費用を取られたり、そもそも契約書面が整えられていなかったりする等、色々と問題点もあるようです。実質的に闇金と言える存在もあるようで、利用すること自体、注意が必要です。

 

この点、一般社団法人日本ファクタリング協会のHPでは、以下のような東京地裁判決を紹介しています。裁判例では、給与ファクタリングを利用した債権譲渡代金を交付すること自体、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付」にあたるとして、給与ファクタリング業者を、貸金業法で定める「貸金業を営む者」にあたると結論付けています。そうすると、給与ファクタリング業者に対しても貸金業法や出資法等の法律による規制や拘束を受けることになります。すなわち、給与ファクタリング業者は貸金業としての登録(貸金業法3条1項)をする必要がありますし、年109.5%を超える割合の利息を支払う内容の給与ファクタリング業を行うこと自体、金銭の手交が無効となります(貸金業法42条1項)。またそのような高利の手数料名目の費用を取る契約を結ぶこと自体、出資法5条3項に違反しますので、刑事上の対象となる恐れもあります。なお、そのような出資法に反する金利を設定した上で交付を受けた金銭自体、不法原因給付にあたる(民法708条)として、給与ファクタリング業者からの返還請求を認めませんでした。

 

生活費の不足により、給与ファクタリングを利用してしまい、後日、多額の手数料名目の金銭請求をされた場合、上述のような諸処の問題点について争う余地がありますので、一度、弁護士に相談した上で今後の対応を検討してみても良いと思います。



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