ご相談者様 | Kさん(50歳) |
医療関係者 | |
内容 | 共有持ち分の処分方法 |
全面的価格賠償方法により終結した事件
ご相談までの流れ
相談者の父親が死亡したものの、財産としては不動産が主だった。
預貯金も大した額ではなく、不動産の名義を法定相続に則って取得することにした。
不動産の価値自体は高額だが、共有不動産には他の相続人が被相続人の生前から同居しており、死亡後もそのまま不動産の使用を継続した。
相談者は不動産を売却処分して、持分に則って分けることを提案するも他の相続人の協力が得られない。
相談者としては、使用もできないし、他の共有者との話合いもできないので弁護士に依頼して解決したい。
虎ノ門法律事務所での対応・結果
当事務所の担当弁護士より他の相続人に受任通知を送り、共有状態解消に向けての話し合いを開始しました。
相手方も代理人を選任しましたので代理人同士の話し合いとなりましたが、話し合いは難航しました。
当方としては、不動産を第三者へ任意売却するよりも、他の共有者に名義を買い取ってもらう方が良いと考え、その旨打診したところ、処理方針については相手方も納得したものの、金額について2倍近い開きがありました。
協議による解決の見込みが低かったため、協議を打ち切り、共有物分割請求訴訟を提起しました。
訴訟でも、当方は従前の主張を維持しつつ、知り合いの不動産業者の協力の下、算定した不動産評価の妥当性について裁判所と相手方に訴えかけました。
裁判所としても、当方の主張に理解を示し、相手方を説得し続けた結果、相手方が何とか資金繰りを果たし、全面的価格賠償方法により和解によって終結しました。
弁護士からのコメント
本件は共有物分割方法について争われた事例です。
同様の相談や依頼は少なからず当事務所にもありますが、その解決方法については難航する場合があります。
まず共有物分割の実施方法としては以下のものが挙げられます。
①現物分割
②任意売却(競売)による売却益を持分により分割
③共有者の一人が持分を全部取得してその対価を支払ってもらう方法
分割方法としては①現物分割が原則であり、②の代金分割は競売を想定しています(民法258条2項)。
さらに、最高裁判所は、第三の分割方法として、全面的価格賠償を認めました。
しかし、あくまで例外的な対応ですのでいくつかの要件を充足する必要があります。
すなわち、全面的価格賠償による分割方法を認めるか否かについては、1⃣共有物の性質・形状・共有関係の発生原因等の事情を総合考慮し、特定の者に取得させることが相当であること2⃣他の共有者に持分価格を取得させるにせよ、当事者間の実質的公平に反しないことの2点の検討を要し、更に2⃣については、具体的に(ア)共有物の価格が適正に評価されていること(イ)当該共有物を所得する者に賠償金の支払い能力があることを要するとします。
過去に扱ったケースでは、全面的価格賠償を選択するにせよ、2⃣(イ)の点で争いになるケースが多い印象です。
共有物分割手続は、相続の結果、頻繁に問題となり得るケースです。
相続問題が発生した場合、通常は共有物分割手続の中で、不動産を適正に評価し、他の預貯金等の遺産で協議するのが一般的です。
しかし、めぼしい財産が不動産しかないような場合には、上記で説明した通り、共有物分割問題に発展する恐れがあります。
どのように解決していくのが良いのか、一度、弊所にご相談いただければと思います。