地代・家賃の値上げ
貸主は、賃料(地代・家賃)を正当な理由なく変更することができません。
借主は、賃料の値上げに納得できなければ、相当と認める賃料を供託することができます。
賃料を払わずにいると、債務不履行で賃貸借契約を解除されたり、損害賠償を請求されたりするおそれがありますが、賃料を供託することで、そのような事態を回避することができるためです。
正当な理由と認められる事情には、主に以下のようなものがあります。
・土地や建物にかかる経費の増加があった場合(税金など)
・経済事情の変動によって物件の価値が大きく変化した場合
・近隣の同種の賃料と大きな差がある場合
更新料
更新について
原則として、賃貸借契約は更新されます。
貸主が更新を拒絶するには、期間満了の1年前から6ヵ月前の間に、借主にその旨を通知しなければなりません。
また、更新の拒絶には正当な理由が必要です。
更新を認めないために、「定期借地契約」や「定期借家契約」を結ぶという方法があります。
国土交通省が作成した「賃貸住宅標準契約書」を活用し、更新の方法についてそれぞれの事情を考慮し、内容を修正するのが良いでしょう。
更新料について
更新料の請求は全国的におこなわれています。
更新料のトラブルを避けるには、契約の時点で、更新料を請求する理由や金額など、お互いが納得できるまで話し合うことが大切です。
当事務所では、法律相談において契約書のチェックをおこなっております。
敷金・権利金・保証金
賃貸借契約を締結するとき、「敷金」や「権利金」、「保証金」など、地代以外にやり取りされる金銭があります。
「敷金」とは、借家契約において、借主が家主に対して預けるお金のことをいいます。家賃の滞納や故意による損壊があると、その金額を敷金から差し引きます。
「権利金」とは、借地権を設定するための対価、または借家契約の対価として支払われるお金をいいます。
「保証金」とは、契約を守ることを担保するために支払うお金をいいます。
このうち「保証金」について、敷金と同じ意味で使われたり、建設協力金などの名目で貸付金として支払われる場合もあります。契約時、その性質や償却の有無、返還時期などを明確にしておく必要があります。
必要費・有益費
借主が貸主に請求できる費用に「必要費」と「有益費」があります。
| 必要費 | 有益費 |
内容 | 保存・原状回復のための費用 | 物の改良のために支出した費用 |
請求できる時 | 直ちに請求が可能 | 契約終了時 (価値の増加が残っていることが必要) |
具体例 | ・雨漏りの修繕費 ・トイレの修理費 など | ・壁紙、カーペットの交換費用など |
「必要費」・・・雨漏りの修繕など、建物の保存や原状回復のためにかかった費用をいいます。
「有益費」・・・壁紙・カーペットの交換など、建物を改良するための費用をいいます。
支出した費用のなかに、「必要費」や「有益費」になるものがないか、今一度検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、特約がある場合はこの限りではありません。
原状回復
建物から退去するとき、借主は建物の原状回復をしなければなりません。
ただし、原状回復の範囲について、借主は、入居前と全く同じにしなくてもかまいません。
その費用は、契約開始のときに支払った敷金のなかから差し引かれます。
原状回復の範囲をめぐってトラブルになるケースが多くあります。
トラブルを回避するため、国土交通省は、経年劣化や通常損耗は家主負担、故意や過失、注意義務違反によってできた傷や汚れは借主負担、というふうにガイドラインを作成しています。
経年劣化 | 畳や壁紙の日焼けなど、年数を経ることで発生する汚れや傷のこと。これらは家主が修繕義務を負担する。 |
通常摩耗 | 通常に建物を使用する範囲内で発生する建物の損傷や劣化のこと。これらは家主が修繕義務を負担する。 |
借主の故意や過失による摩耗 | 通常の使用方法を超えた使い方をした場合や故意や過失、注意義務違反などによって傷や汚れをつけた場合は、その修繕費用は借主の負担となる。 |
承諾料
賃借人が、借地上の建物の増改築や借地権の譲渡などをおこなうときは、賃貸人に対して承諾料を支払うことが多くあります。
その金額はある程度の相場が決まっていますが、当事者の同意によって決めることもあります。
借地条件の変更 | 更地価格の1割程度とされることが多いが、相場をもとに、諸事情を考慮して、当事者同士で納得のいく金額を決める。 |
増改築の許可 | 更地価格の3%前後が一つの目安だが、増改築費用の1割程度を承諾料として支払うケースもある。 規模が小さいものであれば、更地価格の1~1.5%ですむこともある。 |
借地権の譲渡 | 借地権価格の1割程度が原則。 |
造作買取請求・建物買取請求
造作買取請求権とは
造作とは、建物の価値を高めるため、借家人が取り付けた付属物をいいます。例えば、エアコンや水道設備、畳・雨戸などをいいます。
このような造作は、借主が貸主の同意を得て取り付けた場合、契約終了時、借主が貸主に造作を時価で買いとるよう請求することができます。これを「造作買取請求権」といいます。
しかし、借地契約において、造作買取請求権を排除する特約が結ばれていることが多いため、契約書を確認する必要があります。
建物買取請求権
借地人が借地に建てた建物は、契約が更新されないとき、その建物の買取を借地人が地主に請求できる権利をいいます。
建物買取請求権は、借地人にとって重要な権利であるため、特約で排除することはできません。
立退料
賃貸人から不動産の明け渡しを請求されたとき、立退料(明渡料・移転料・補償金)の名目で金銭が支払われることがあります。
立退料の算定は、貸主が土地(建物)を必要とする事情や借主が移転できない事情、契約期間、賃貸物件の規模と構造、家賃、敷金・礼金の有無などを基準としておこないます。
立退料を支払う必要性やその額について、非常に多くのトラブルが存在します。
トラブルになったら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
駐車場経営
駐車場経営は、手間がかからず、安定した収入が見込めるメリットがあり、地主にとって魅力的な賃貸手段です。
また、借地借家法の適用もなく、専門知識も少なくてすみます。
駐車場経営を始めるにあたって、下記のような法令の規制があることに注意しましょう
・建築基準法 ・消防法 ・道路法
・道路交通法 ・駐車場法施行規則
・駐車場法施行令 ・駐車場法 ・バリアフリー新法
賃貸借に伴う税金
不動産の賃貸借契約によって得た収入は、不動産所得として、課税対象になります。
その計上は、その時期や方法、消費税がかかるかどうかなど、非常に複雑です。
虎ノ門法律経済事務所には税理士も在籍しておりますので、賃貸借に関する法律相談と税務に関する相談をワンストップで受けることができます。
借地非訟
借地の契約内容変更や借地権譲渡などの場面で、土地の所有者と借地権者の話し合いが進まないとき、非公開の法廷で、裁判所が後見的に間に入り、借地条件の変更や借地権譲渡の許可などをおこなうことを、「借地非訟」といいます。
この解決方法では、訴訟のように公開の法廷で対審構造を取りません。ただし、この方法を使えるのは次のような事件のみです。
1. 借地条件変更申立事件(条件変更事件)(借地借家法17条1項)
2. 増改築許可申立事件(増改築事件)(借地借家法17条2項)
3. 賃借権譲渡・土地転貸許可申立事件(譲渡事件)(借地借家法19条1項)
4. 競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件(公競売事件)(借地借家法20条1項)
5. 借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件(介入権事件)(借地借家法19条3項,20条2項)
6. 更新後の建物の再築許可申立事件(借地借家法18条)
※平成34年8月以降に申立てが可能
サブリース
サブリースは不動産のオーナーにとってとても魅力的なシステムです。
不動産会社が物件を賃借し、それを第三者に転貸する形式の事業形態をいい、場合によっては、広告に「アパート一括賃貸」「30年賃料保証」などと謳われております。
サブリースには以下のような、メリット・デメリットがあり、トラブルに関するいつくかの裁判例も出されています。また、新築サブリースに関しては、建築請負契約の内容についてもあわせて検討する必要があります。
メリット
| デメリット |
建築から不動産会社が一括管理してくれるため、専門知識が不要 | 不動産会社が指定した条件・建築費で建物を建築しなければならない場合がある |
不動産会社が賃借人を見つけてくれるため、オーナーの負担が少ない | 外国人など、オーナーの意向に沿わない者が入居する場合がある |
空室分・滞納分の賃料もオーナーに支払われる | 市場や経済状況の変動により、賃料が見直され、減額請求されるリスクがある サブリース会社の倒産のリスクがある 転貸料が安く設定された場合、契約終了時の維持費が多額になるリスクがある
|
原状回復は、不動産会社又は提携・管轄する管理会社側が行ってくれる | 建物管理・修繕などについて不動産会社が指定した条件・仕様となる場合がある |
不動産管理信託
不動産管理信託とは、不動産の管理を目的として信託会社に信託し、信託会社が不動産の管理をおこなうものをいいます。
サブリースと違い、委託者の意思に沿って管理されます。
ただし、不動産管理信託の場合、不動産の名義が委託者から受託者に移転しますので注意が必要です。
意思凍結機能
信託を設定したときの委託者の意思は、委託者が意思能力を喪失したり、亡くなったりしても、設定当時の契約通り長期間にわたって維持されます。
受益者連続機能
委託者によって設定された目的を固定したまま、受益権を複数人に連続して帰属させることができます。
この機能によって、世代間にわたる受益権の承継が可能です。
倒産隔離機能
委託者が破産したときは、信託財産は委託者の名義でないため差し押さえられることはありません。
また、受託者が破産した場合、受託者はあくまで管理を委託されただけなので、差し押さえの対象にはなりません。
このように、どちらの場合においても差し押さえられず、隔離される機能をいいます。