20/4/17
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弁護士の村木です。
 
緊急事態宣言が発出されたことにより、接客業を中心とする特定の企業に対しては、営業活動の自粛の雰囲気により、自粛するか否かについて検討する必要が生じました。のみならず、兵庫県といった緊急事態宣言対象地域の知事は、ネットカフェやスポーツジム等の接客を伴う事業者に対し、休業要請を行うことができます、要請を受けた事業者は、事業縮小に関連して、必然的に正規・非正規の従業員に対しても、在宅勤務や休業を命じることに繋がります。

まず、従業員は、事業者から在宅勤務を命じられた場合、自宅で業務を行う必要がありますので、PCや電話を用いて会社とインターネットやテレビ会議を使用することになります。他方、事業者としても、セキュリティや情報漏洩の防止の問題から、ノートPCなどを従業員に支給した上で使用させるのが適切と言えるでしょう。また、取引先や社内の連絡ツールとして携帯電話を使用させる場合も、情報漏洩等の問題や公私混同を避けるため、事業者側が携帯電話を提供したうえで使用させるべきです。
事業者は、在宅勤務を命じた場合も、当然ですが雇用契約に則って所定の賃金を支給する必要があります。
他方、事業者が従業員に休業を命じた場合はどうでしょうか。事業者側の責めに負うべき事由によって従業員が休業を命じられた場合、民法536条2項によって、従業員は会社に賃金を請求できます。そのため、事業者は、会社の都合により従業員に休業を命じたとしても、休業期間中の賃金の満額の支払い義務が発生します。しかし、この規定は任意規定とされていますので、変更することが可能です。そのため、就業規則において、平均賃金の60%を休業補償とする旨取り決めていることがあります。これは、労働基準法26条に、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」との規定を踏まえてのことです。

それでは、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、緊急事態宣言が発出されたことを受け、従業員を休業させた場合にも、「使用者の責めに帰すべき事由」にあたるのでしょうか。私は、この点は、適宜、場合分けして検討する必要があるのではないかと考えます。具体的に、①緊急事態宣言の対象区域以外の地域における休業命令の場合、②緊急事態宣言の対象区域に含まれるものの、都道府県知事による停止等の措置を要請されていない場合、③緊急事態宣言の対象区域に含まれ、都道府県知事から停止等の措置の要請がされた場合の3つの段階です。このうち、①については、経営判断として業務を縮小し、従業員に休業させたとしても、休業補償を負担する必要があると言えそうです。他方、②や特に③の場合については、必ずしも使用者の責めによる休業命令とまでは言えないようにも思います。いずれにせよ、事業者としては、そもそも臨時休業等の判断をして事業を縮小させるべきか否か、従業員に対して休業補償を負担するのか否かについて、休業補償を満額負担するのか、就業規則に則って満額を支給しないのか等、多くの場面で慎重な判断が必要となります。なお、休業補償を負担しなかったり、十分な補償をしなければ、ひいては休業が明けての従業員との関係悪化は避けられないでしょう。
事業者が休業補償を負担した場合には、負担金の多くについて雇用調整助成金が利用できる余地がありますので、その利用を検討するのも一つの方法です(休業補償の90%が最大。8330円の上限あり。)。



以上については、事業主と雇用関係にある従業員との関係について検討でしたが、次回は雇用関係ではなく業務委託契約関係を結んでいる場合について検討したいと思います。
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